厚生年金保険は基本的にはインフレヘッジが効くものです。
厚生年金では積み立てている期間発生するインフレを考慮したうえで年金額を計算する仕組みになっています。給与をもらった時期によって異なる貨幣の価値をならすため、実際の給与額に「再評価率」を掛け算して現在価値に引き直す方法がとられます。
再評価率は年々改定されて発表されています。日本年金機構のホームページにその数値が掲載されています。ここに掲載されている数値を見れば、非常に古い時期に払われた給与に対する換算率は高く、デフレの時代になってから支払われた賃金には1以下の換算率の設定がされていて、考え方として各時期に支払われた給与を今の現在価値に引き直して合算して年金の基礎となる平均標準報酬月額を計算しています。
この改定により、再評価率が改定されるごとに年金額を算定し直すことになりますから、将来にわたり継続的にインフレやデフレを年金額が反映することとなります。
再評価率の算定にはマクロ経済スライドが適用されるため、必ずしも完全なインフレヘッジとはなりません。マクロ経済スライドとは、少子高齢化の影響を数値として年金額に反映させる仕組みです。別の記事で紹介していますので参考にされてください。
この仕組みは将来日本がさらなるインフレに見舞われた場合、再評価率の上昇を通じて年金の受け取りの実額が上昇することを意味します。
これは確定給付年金が将来の実額としてのキャッシュフローが決定していることからインフレが発生すると年金が目減りしかねないことに比して、優れている特徴と言えます。
一方で再評価率は細かい区分に沿って決定されるうえ、毎年その数値が変化するため、自力で厚生年金の金額を計算することは難しいと考えられます。ただ、大幅な変化はないでしょうから年金定期便で来る数値を参考にしていてよいとは思います。ただ、大幅な物価変動があった場合には、必要に合わせて年金事務所で数値を確認することが必要になると思われます。
ちなみに国民年金保険は、「改定率」を改定することで年金額に対してインフレヘッジが効くように設計がされています。この改定率もマクロ経済スライド(少子高齢化影響)の調整を受けることは厚生年金と同じです。
日本の年金額は必ずしも十分でないうえに完全なインフレヘッジも効かないかもしれませんが、それでも私は日本の年金制度は優れた構造を持っているものと思いますし、安心して年金をあてにしていてよいと思います。そしてその制度が良い制度である以上、民主主義の国の参政権を持っているものとして、制度の維持を図れるよう、適切に行動していくこと(保険料や税金をきちんと納付する。民主主義をまもる流れを支持するなど)も求められるだろうなと思います。
厚生年金のインフレヘッジの仕組み「再評価率」とは

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